森羅万象セミナー

第1回 §5

このようなことは、あちこちのところで、科学においてもたくさん起こります。例えば、この間、ある医学の本を読んでおりました。いわゆる神経系と免疫系は、かつては全く独立的で別々のものだと考えられていました。要するに、免疫系はどことも対話をせず全く自律的なものであって、神経系とは関係ないというふうに昔は言われていたんですね。あるとき、あるアメリカの医師が免疫系の細胞を見ておりました。しかしその中にどうも神経系としか思われない糸が顕微鏡で見える訳です。明らかに見えるんですね。おかしいなと思いました。その当時は免疫系と神経系が話をするということは、知られていなかった訳で、これはどうも見まちがいじゃないかなって思って何度も見ても、やっぱり完全に神経系なんですね。もしかしたら、本当は神経系と免疫系が話をする、関係があるっていうことは既に知られていることで、自分だけが勉強不足で知らないのかもしれない…と思って、あちこちの文献を見てみたんですけれども、どこにも書いてないし、同僚に聞いてもそれはもう全然別々のものだよって言われるんです。いろんな文献を見ていっても、どこにも載っていないのでそれを発表した訳です。これは極めて大きな発見で、免疫系、つまり病気のなりにくさということに、神経系、例えばいろんなストレスが関係しているということが、細胞レベルで分かったということで、大きな発見になった訳なんですが、話はこれからなんです。

その発見の後でそれまでの文献を見ていると、免疫系の細胞の拡大写真があり、免疫系と神経系は関係ないという例として、写真が載っているわけなんです。しかしその写真の中には明らかに神経系の細胞が写っているんです。しかし免疫系は独立していると思い込んでいるので、そこには明らかに写っているにも関わらず、見えないんですね。見えない。科学者も見えないんですよ。そして免疫系と神経系が対話している、と言われたとたんに、みんなが急に見え始めてきたんですよ。あーあー、確かに写っている、と。でもそれまでは、全然そういう発想がないので、そちらの方に回路が行かない訳です。そちらの方につながって行かない。信号が行かない訳です。目の前にあっても分からない。まあよくあります。探し物をあちこちいろんなところを探して、どこだどこだ、ってやっと見つけたら、何回も見ているはずのところにあったりする。

第2回の「唯識」のことにもつながっていくわけですが、こういうことがあらゆるレベルで起こるわけです。科学というものは、まず第一に何が起こっているのか、それを認識するということ。そしてそれがどのような法則性で起こっているのか。そしてできうるならば、それがどのようなメカニズムで起こっているのか。なぜ起こっているのかっていうところに進んでいく訳ですね。これは科学というものを考えたらごくごく当たり前のことで、何の不思議もありません。あらゆる科学の前提は何が本当に起こっているのかということですから、そういうことが起こるはずがないとか、そんな話は全く幼稚な話です。

あえて申しますと、科学では、「『なぜ』起こっているのか」っていうことが、本当に分かっていることは一つもありません。一つもないんです。「『なぜ』起こっているのか」が本当に分かっていることは一つもない。そう言いますとね、いやそんなはずない、と思う人はたくさんいると思います。それでは、電気自動車はなぜ動くのでしょうか。それは電気で動いている。電気とは何か、プラスとマイナスのね、電荷がある。どうしてプラスとマイナスの電荷があるか、となるわけです。私たちが子供に、「なぜ」って聞かれるとね、一回二回は答えられるけども、だんだん答えられなくなりますよね。実はね、これは科学でも一緒です。「なぜ」の問いに答えていることは、実は本当の「なぜ」という答えではなくて、単なる置き換えです。単なる言葉を置き換えているだけです。その置き換えがだんだんきかなくなってくる訳ですね。きかなくなってくるとだんだん言葉に詰まるわけです。本当は「なぜ」っていうことが分かっていることは、科学では一つもない。本当に一つもないんです。「なぜ」という問いをつきつめて、最終的な「なぜ」を分かっていることというのは、何もない。本当に何もないんです。

一番いい例、一番端的な例は、重力です。重力っていうのは、我々にとって一番身近なものの一つですね。このペンを放り投げますとね、やがて落ちます。我々はこの現象を捉えます。このように飛んでいって、このように落ちる。それを我々は認識します。科学の基本的な第一ステップです。その次に、どう進むかというと、どのように落ちてくるのか。これをどういうふうな初期条件で放り投げたら、何秒後にどこにあってどういうふうな運動をしているのか。それが分かります。そうやって重力の公式というか、方程式が出てきます。何秒後にどういう状態にあるっていうこと、これが分かります。じゃあ重力って一体何でしょうか?

重力のメカニズムは何でしょうか? と言った時には実は誰も答えられません。我々はよく、それがなぜ起こっているのかが分からなければ「非科学的」だ、そんなものは考えるに値しないって言いますけど、重力がなぜ起こっているのか、ということに、ほんの少しでも答えられる物理学者は、世界の中で誰もいません。重力はなぜ起こるんですか、と訊いて、「これは万有引力です」というのは、言葉の置き換えに過ぎないので、実は何も意味しません。

万有引力という法則は、「宇宙におけるあらゆる物質同士は引き合っている」、そして「その引き合っている力はどのくらいである」という法則です。物質というのは必ず引き合い、引かれあっている。また、どのような力で引き合っているかも分かる。しかし、なぜ引き合っているのかっていうことは、何も分かっていません。全くゼロなんです。重力という我々にとって最も身近なもの、その重力とは何かということが全くなんにも分かっていない、これは本当に驚くべきことですね。

重力のメカニズムは何も分かっていない、ということは、重力というものは「科学的」に証明されていない、ということになります。重力は「科学的」に証明されていない、重力は「非科学的」だから存在しない、というふうに言えるでしょうか。重力は「科学的」に証明されない。「科学的」に証明されていないものというと、通常は「オカルト」だと言われます。だから重力は「オカルト」である…そう言うとおかしいですよね。しかし実を言うと、ニュートンが万有引力の法則を発表したときに、「オカルト」だと本当に言われたんです。どうしてかというと、万有引力というのは、どんなに遠くても、例えば、何億何兆光年のはるか向こうにある何かの物とこのペンとは引かれ合っているという話です。遠隔力といわれる力です。つまり例えばこのペンがこの紙に直接ぶつかったりして、お互いに力を及ぼすことであれば分かるけれども、遥かに向こうのものと何らか力を及ぼしあっているということは、非常にイメージしにくいことですよね。だから、万有引力の法則をニュートンが言い出したときには、当時のいわゆる科学者たちからは、「遠隔力という亡霊」「『オカルト』を持ち出した」「『非科学的』だ」…と非難されました。

続く

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