次元の話は大きなことなんですが今日は置いておくとして、まず理解していただきたいのは、物質的表現というものはエネルギー(というかエネルギー的状態)の表現、言い換えれば「実」である。そしてそれはあくまでも表現に過ぎなくて、その元になる「虚」の世界の方が本当は遥かに大きいということです。それが、先ほどの方程式に生の形で「虚」の世界(=i)が出てきて、水素原子の振る舞いを表現しているということにつながっていく訳なんですね。

今、ポンとお話いたしましたけども、このことについては少し頭の中で整理してみることが大事だと思うんです。すぐには受け入れられないとか、ピンとこないとか、ちょっとやっぱり不思議な感じとか、いろいろお感じになると思います。先ほどの有理数・無理数については、比較的理解がしやすいかも知れません。ですが「虚」については案外と、腑に落ちるまではね、時間がかかるかも知れません。ここまででご質問はありますでしょうか。

Q:このシュレディンガー方程式というのは、認められたというか、認知された方程式なんでしょうか。

認められているどころか、この方程式を基に量子力学というものができています。最も基本的な方程式です。だから、どこかのちょっと頭のいかれた人が空想的に勝手に作り出した方程式ではないんです。今から70年くらい前、原子の振る舞いをいろいろ研究したとき以来ずっと今日まで、このシュレディンガー方程式というものが、原子の振る舞いの最も基本的な方程式になっています。これはあくまでも原子の振る舞いというものを表現している訳であってね、原子の振る舞いを記述する時に、これ以外の方程式はあり得ない。水素原子などの振る舞いというのは、これによってしか表現することができない、そういう基本的な方程式です。

Q:さきほど(第1回 §18)、シュレディンガーさんは原子を波動的に捉えて、ハイゼンベルグさんが原子を粒子的に捉えた、というお話があったと思うんですけれども。シュレディンガー方程式が波動的な表現で、ハイゼンベルグさんの不確定性原理が粒子的な表現、ということでしょうか。

不確定性原理とは何かということですけども、物理学の上では、原子の状態を測定しようとする時に、その位置と運動量を同時に、限界なく精密に測定することはできない、という原理ですね。すごく簡単に言いますと、物理学では何かを測定するとき、その位置と運動量、この二つの要素から成り立ちます。つまり、測定する対象が今どこにあるのか、そしてどのような運動をしようとしているのか。

古典力学では、この二つは任意にいくらでも精密に測定することができる、というふうに考えていたんですね。位置も、またその運動も、極めてクリアに測定できると考えていた。けれども原子の世界ではそうはいかなくなったんですね。測定するということが一体どういうことかを考えてみれば、これは当たり前のことなんです。例えば何かを測定する時に、光を当てる。例えば、このコップを測定するとします。その時には、そして光を当てますね。このコップが、現在どこにあってどのような運動をしているのかっていうことを、何らかの測定装置を使って測定する訳です。この時、通常例えば光とかレーザーとか、何でもいいんですけれどもそういうものを当てて測定します。

この時、古典力学ではそれ以上考えなくて良かったんですが、原子のようなものを測定しようとしたとき、それまでにない大きな問題が出てきました。原子の位置と運動量を測定する時に、じゃあ一体何で測定するかっていうと、先ほどお話しましたように、やはり光になる訳です。コップとか、こういう大きなものを測定する時にはね、光を当てるということによって何か影響が起こるっていうことは、近似的には考えないで良かったんです。コップの方が圧倒的に大きいので、考えなくて良かった。ところが、今度測定しようとする原子と、光っていうものは、同じぐらいのレベルの微細なものですね。そうするときにね、問題が起こったわけです。

今、Wさんの位置と運動量を測定するとします。で、その測定する道具が同じくらいの大きさのもの、例えば私だとします。どのように測定するかと言いますと、私がWさんに全速力でバーンとぶつかる訳です。この時にね、まず位置をきちんと測定しようとすると、できるだけね、波長の小さい光を当てる訳なんですけれども、波長の小さい光は非常に力が強くなる。それと同じように、私がWさんに強い力でバーンと当たるとしますね。そうすると、Wさんとどこで当たったかっていう位置は測定できるんです。だけれども、Wさんが私とぶつかったときにどのような運動をしていたのかっていうことは全く分からない訳です。ただWさんと私が、どこでバーンと当たったことが測定できるだけなんです。Wさんがゆったりとこちらに来たのか、それとも急いで来たのか、とにかくここで二人がぶつかったっていうことだけしか分からなくなる。つまり、原子の位置を正確に知ろうとすればするほど、この光の波長を小さくしなきゃいけない。その波長を小さくすればするほど、力が強くなっていって、そうすると、当たった瞬間に原子はバーンとどこかに行っちゃうので、そもそもどんな運動をしていたか分からない。

では今度は、原子の運動に影響を与えない方法を考えてみましょう。Wさんの運動に影響を与えないような、そういうふうな光を当てようということになると、力は強くないんですが、非常に波長が長い光になる訳です。そうしますと確かにね、どういう運動をしていたっていうことは分かる。けれども、非常に波長が長いので、今度は、どこかでは当たったんだけれども、それがどこなのかが全然分からないということになってしまうんです。どこかではあると思うんだけど、でも全然確定しない、ということになる訳です。そうすると、運動量は分かるけれども位置は全然分からない。まあ、そういうことで、位置と運動量というものを同時に、精密に求めるということはできなくなる。どっちか一方を精密にすると、一方は精密にはできなくなる。簡単に言うと、これが不確定性原理というものです。

まあ、この不確定性原理というものは、いろんな意味合いがあるんですけれども、先ほどのWさんのご質問は、この不確定性原理が何に通じてくるということでしたでしょうか。

Q:波動と粒子の説明の違いが出てきたので・・・

そうですね、これは今度お話するところに関係をしてきまして、非常に大きな問題になってくるので、ちょっと今日、これ以上お話するのが難しいと思います。

Q:そうですか、分かりました。

 

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