ホメオパシーは、人と病の付き合い方を変えます。

現代医学の限界が明らかになるにつれ、ホメオパシーに大きな注目が集まっています。

ホメオパシーという言葉は日本ではまだ聞き慣れませんが、どのような療法なのでしょうか。

ホメオパシーのホメオは「似たもの」、パシーは「病気」という意味で、「同種療法」「類似療法」と訳されます。その内容をごく簡単にいえば「似たものが似たものを癒す」という原理により、心身に入り込んだ病的エネルギーを押し出し「病気を終わらせる」療法です。そして生命(いのち)のレベルを高め、私達をより幸せに導いてくれる癒しの業、それがホメオパシーです。

ホメオパシーの創始者ハーネマン

起源は古代ギリシャのヒポクラテスにまで遡りますが、近代ホメオパシーの創始者は、磁器で有名なドイツ・マイセン出身の医師サミュエル・ハーネマン(1755〜1843)です。

彼はマラリアの特効薬として知られていたキナの皮を煎じて自ら服用した結果、高熱、発汗、衰弱などキナの皮が治すというマラリアそっくりの症状を引き起こしたことに大きなヒントを得て、ホメオパシーの基本原理を発見しました。

つまり、それが健康な人間に投与するとある症状を起こせるものは、似た症状を持つ病気を癒すことができるという「類似の法則」の発見です。ハーネマンは、この原理に基づいて、ホメオパシーを提唱したのです。

この逸話は、ニュートンがりんごの実が落ちるのを見て万有引力を発見した有名なエピソードと同じくらいホメオパシーにとっては重要です。ホメオパシーは、当時の医学界で評価・反発を含めて大反響を巻き起こしたのですが、ともかく非常によく効くものですから、ヨーロッパはもちろん、アメリカでも半数近くの医師はホメオパシーに転向した時代もあったのです。

何故私たちの身近で知られていないのですか。

現代医学が非常に進歩したように見えたのに対し、ホメオパシーには発展がないように見えたこと、またホメオパシーのレメディーはとてつもなく薄められ、元の分子がまったく存在しないといってよいほど薄められるものですから、そんなに薄めてなぜ効くのかという大きな疑問があったからなのです。そのため、現代医学の発展の陰に隠れていたわけです。

しかし、素晴らしい未来を約束されたように見えた現代医学も、残念ながら大きな壁に突き当たっています。一方現代科学の驚異的な進歩で、かつてはまったく不可思議であったホメオパシーの原理も少しずつ解明されており、欧米ではホメオパシーが改めて脚光を浴びています。

ちなみに英国王室をはじめ、ヨーロッパ各国の多くの王室の主治医はホメオパシー医です。いまやドイツやフランスでは医師の 4 割近くがホメオパシーを用い、また医学のカリキュラムにもホメオパシーが入っています。またアメリカでもホメオパシーのレメディーの売上がこの15 年間で約 30 倍にもなっているほど注目されています。

ホメオパシーには病名がありません。私たちの個性・体質が異なるように、症状もすべて異なるからです。

ホメオパシーのセッションはどのように行われるのですか。

まず、ホメオパシーには現代医学的な意味での病名というものがありません。実はそもそも「病気というもの」は存在しません。
Aさんの症状、Bさんの症状という千差万別の「症状」があるだけで、病気という「もの」は存在しない。ですからホメオパスは、クライアントの症状の全体像を組み立て、その「症状の全体像」に対してレメディーを投与します。

ホメオパシーのセッションでは、特に初回にとても時間をかけ、クライアントからいろいろな話をお聞きします。最初は1時間から2時間くらいゆっくりお話しを聞きます。病気とは一見関係なさそうな事もさまざま聞いて、「症状の全体像」を描いていくわけです。

ただし、症状といっても現代医学でいう症状とはかなりニュアンスが違います。ホメオパシーではその人特有の変わった症状が重要で、変わっていればいるほど重要なのです。これは似顔絵を描く作業にたとえられるかもしれません。

現代医学で重要な症状は病名に対する標準的症状ですから、たとえると、目がふたつ、鼻と口がひとつ…でも、これでは似顔絵になりませんよね。しかし、ホメオパシーでは、目は切れ長で、鼻はダンゴ鼻で…など、その人ならではの特徴を一つ一つ積み重ねて症状の全体像を組み立てていくわけです。そして、その全体像と最も似たレメディーを選び、クライアントに与えるのです。

ホメオパシーでは病気をどのようにとらえているのですか。又、病名がないというのはどのような意味なのでしょうか。

病名がないというのは、「現代医学的病名」がないということです。ホメオパシーにとって意味がありませんから。ただホメオパシーではクライアントの事をホメオパシーのレメディーの名前、たとえばLycopodium (苔杉)の方、Apis (蜜蜂)の方、と呼んだりもします。

ホメオパシーにとって健康とはその人のVital Force(生命力エネルギー)が正常な状態、病気とはそのVital Forceが障害を受けている状態、病気の症状とはその唯一の表現であると考えています。生命のエネルギーがこんな障害を受けているという苦悩の表現であり、また治癒の過程でもあります。

たとえば嘔吐はいやなものですが、体が受け付けないものを外に出してやるという治癒の過程でもあるわけです。ですから、同じ症状を起こせるレメディーを入れることによって、その出ていく力を助けてやる…そのことだけをホメオパシーは行うのです。

レメディ(治療薬)は、薄めれば薄めるほど効果がある。これが東洋医学とも違うホメオパシーの特徴です。

漢方やアユルヴェーダ等の東洋医学でも自然治癒力に働きかける事に着目しているわけですが、ホメオパシーとはどこが違うのですか。

漢方やアユルヴェーダもやはり優れた療法だと思いますが、調薬がちゃんと成分としてあって、それが自然治癒力を高めることにつながるわけですね。ところが、ホメオパシーのレメディーは、いわゆるクスリではありません。

ホメオパシーのレメディーは、信じられないほど極端に薄められています。ホメオパシーでは、もとの成分 (植物、鉱物、動物などさまざまな原材料) を水や酒精でどんどん薄めてゆきます。それも、一般的なレメディーですら10 の 60 乗倍、中には10 の 200 万乗倍というように天文学的に薄めていくものもあります。

なぜ成分がなくなる程に希釈されたものが深い作用を及ぼすのでしょうか。

なぜそんなに薄めているものが効くのか、と言う事については量子力学や化学の観点からさまざまな説明がされようとしていますが、未だはっきりとは解明されてはいません。ただ、どのようにすれば効くか、ということについてはかなり分かっています。ちょうど麻酔のメカニズムは全く分かっていないけれども、どうすれば麻酔ができるかは分かっているのと同じように、臨床的に数え切れないほどのデータで実証されています。ともかく、この「薄めれば薄めるほど効果が深くなる」というところに東洋医学とも異なるホメオパシー独自の特徴があり、生命の力という無形のエネルギーレベルに働きかけている証でもあります。

薄めるほど効果が深くなるというのは、ちょっと常識では信じられませんよね。

まず、その「常識」というのも自体をもう一度検討してみる必要があるかもしれません。たとえばニュートンでさえ万有引力の法則を発表した時、当時の科学界の強い非難の的となりました。とてつもなく遠い月と地球がお互いに力を及ぼしあっているとは科学ではなく、オカルトであると…あのニュートンがです。

また 200 年前にイギリスの医師が産褥熱を予防するために手を洗うことを提唱した時にもやはりオカルト扱いされました。病原菌が発見されてから現在まだ100 年余りしか経っていません。当時は手を洗うということと産褥熱の予防とは全く結びつかなかったのです。ですから部屋の前で手を洗うのはまさにオカルト的儀式だというわけです。現代人の目から見ると、当時の人々は何て馬鹿なんだと思ったりするかもしれませんが、はたして私たちは彼らを笑えるでしょうか。

それから、ホメオパシーをプラシーボ効果ではないかと揶揄する人がいますが、これは二重に間違っていると思います。1つにはその人たちはプラシーボ効果をある種のごみ箱かのように思っているのですが、本当はプラシーボ効果というのは凄いことなのです。信じたり祈ったりするだけで病気が治る生命の働きというものこそ今から本当に掘っていかなければならない大鉱脈なのです。

2つ目に、ホメオパシーは動物にもまったく同じように働くのですが、犬や猫もホメオパシーを信じているから働くのでしょうか。つまりホメオパシーは、人間、動物、植物といった種を超えた大きな生命エネルギーに直接働きかけているものなのです。レメディー (治療薬) は、薄めれば薄めるほど深く作用する。これが東洋医学とも違うホメオパシーの核心なのです。