そうですね、先ほど西阪先生がおっしゃった「自由」ということについて、少しお話していきましょう。「自由」といえば、エーリッヒ・フロムという有名な人の本に「自由からの逃走」という本がありました。この「自由からの逃走」という本の内容をすごく乱暴に、簡単に縮めて申し上げますと、「自由ほど不自由なものはない」ということなんですね。「自由」と言うときには、いろんな「自由」があるわけですけれど、人間というものは、何となく漠然と「自由」というのは一番楽で、いい状態だというふうに、たいてい思っています。本当は、ひとくちに「自由」と言っても、いろんな「自由」があるわけですね。本当の本質的な「自由」もあるし、ただ単に糸が切れた風船のような、そのような意味での「自由」もあります。

その本当の「自由」というのはどういうことかと申しますと、これは、本当の道理に基づけば基づくほど、自然の秩序に従えば従うほど、実は自由になるということなんですね。例えば重力というものがある。で、その重力というものから、自分は自由になりたい、そんなものからは関係なくなりたい、というふうに振舞ったとします。自然の重力の法則に逆らってと申しますか、そんなものは存在しないようにしようというふうに振舞おうとするわけです。するとどうなるかって言うと、かえって非常に不自由になるわけですね。つまり、自然の道理に基づかないで反しているわけなので、あらゆることが非常に不自由になります。逆に、その自然の秩序というものに基づけば基づくほど、それは自然に基づいているわけですから、何ものも阻むものはなく、自由になっていくわけです。秩序そのものに基づいているわけですから。ですから、言葉上は逆説的になりますけども、実は「自由」というものは、道理に従えば従うほど「自由になる」。またそれに逆らえば逆らうほど、実は「不自由になる」。まあこのような、逆説的な関係というものが成立するわけです。

このエーリッヒ・フロムという人はね、第二次世界大戦、特にナチスドイツの時代の人たちが、どのようにして結局ヒトラーの言うことにどんどんどんどん従っていったのか、そういったことを考えた人なんです。その中で考えたことが、実は人間というものは、糸が切れた状態、糸が切れた風船のような狭い意味での自由というものを非常に苦手としているし、実はそれはほとんど恐怖ですらあるということだったんですね。むしろ人間は、自分を引っ張っていってくれる強い力っていうものを必要としている。それが、本来の宇宙的な自然の秩序に従うということになればいいんですけれども、なかなかそうはいかない。宇宙的な自然の秩序というものは、見た目にはあまり強くないわけなんです。これは、ちょうど今さっき重力のお話をしましたけどね、ちょうど重力と電気力のようなものなんです。

宇宙には、4つの力というものがあるというふうに言われています。「重力」、「電気力」、それからまあこれは微細な世界の力になりますけれども、いわゆる「強い相互作用」、「弱い相互作用」というふうに言われます。他にも、原子核の核力に関係するような力っていうものがありますけれども、それは別としましてね、この「重力」というものは極めて弱いわけなんです。極めて弱い。「電気力」っていうものは極めて強い力です。

「重力」というのはどのぐらい弱いのかっていう話をしましょう。「重力」、いわゆる万有引力ですね。万有引力はニュートンが発見したもので、宇宙のあらゆるものっていうものが、お互いに引き合っている力です。これは距離の二乗に反比例するわけですけれども、まあとにかくね、この法則にいうように、宇宙に存在するものは、どのように遠くにあるとしても、実は引き合っているわけなんです。しかしながら、極めて微細な、極めて微弱な力なんです。それに対して電気のエネルギーっていうものはね、極めて強い力です。私はこの電気の話って、前回しましたでしょうか。してはいないですね。

大学に入った時にですね、物理学の教科書を読んだんです。まあ教科書というか、参考書ですけど、その中にファインマンという人の(1965年に、朝永振一郎博士と一緒にノーベル賞を受けた方ですけども)「ファインマン物理学」という、とても楽しい本がありまして、それをたらたら読んでおりました。その中の「電磁気学」というところでね、もうびっくりしたんですね。ていうのは、こんな例え話があったんです。

 

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