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永松学長
質疑応答

永松学長

前半では、松本先生に予防接種一般と申しましょうか、ワクチンとは何なのか、生物学者の立場から科学的側面をお話していただきました。松本先生については、『ホメオパシー医学への招待』という素晴らしい本を執筆なされたのでご存知の方も多いと思います。

一般的に、予防接種という単なる言葉から、それは予防してくれるいいものではないかと、なんとなく思っている傾向があります。予防接種とは、元来受けなくてはならないもので、受けないといえば、何か一般的ではない非常に変な信念を持った変わった人、という印象を与えたということが随分ありました。しかし、最近は予防接種について、随分といろいろな反証や疑問が一般的にもなされていて、必ずしもそうではないということになってきております。

前半の要点:ガン細胞、不活化、副反応、突然変異、小児疾患の必要性

今日前半の松本先生のお話をお聞きして、非常に興味深い、いくつかのポイントがあったと思います。

第一に、ワクチンを作るときに、ガン細胞を使うということです。これはホメオパシーに携わる者にとって、非常に関心が深いことです。アインシュタインのエネルギー公式を待つまでもなく、およそあらゆる物質は、エネルギー的存在でもあるからです。ですから、あらゆる物質的存在には、その存在理由、歴史、すべての要素が有機的に絡み合っています。その中でもホメオパシーのレメディーというのは、薄めて叩く、薄めて叩くということをやりながら、物質性をだんだんと極めていって、ある種のスピリチュアルなエネルギーにまでしているものです。

ですから、「ワクチンという存在のあり方」とガン細胞で培養されたということが、何の関係もないということは考えにくいのです。そしてワクチンが始められた時期と、ガンが世界的にここまで蔓延してきた時期は重複しますので、やはり何らか関連があるように感じます。これを直接的に検証するのは難しいですが、ホメオパシーの立脚点からエネルギー的に微細なレベルで考えますと、とても無関係とは思えません。物質的にもですが、エネルギー的にも深く結びついているのではないかと、そのような感じがいたしました。

不活化についてですが、培養した活性のままのワクチンですと当然人に病気を起こすので、それを何らかの方法で不活性にして、弱める、もしくは殺すことで、必要最小限の刺激にしていこうと不活化するわけです。つまり簡単に言うと、毒でもって殺そうとしているわけです。しかしお話にあったように、人間そのものを不活化しかねないような危険な毒を入れているわけですから、非常に危険を伴うものでもあります。

今日は「ホメオパシーとは何か」というセミナーではありませんので、ホメオパシーについての詳しいお話はできませんが、ホメオパシーとは何かを多少乱暴に申しますと、健康な人に苦しみをもたらす原因がそのまま健康に戻してくれる力になるのです。つまりそれを起こした本当の原因しか、本来の健全な姿に戻してくれるものは他にはない、つまり、その真の原因しかその原因を解決することができないということです。よく考えると、当たり前のことなのですが、どんなことも真の原因に遡って解決しなければいけないということです。そもそもその病気を起こしたものはその病気を治す力を持っているわけです。ですから、本当は作用を恐れて毒で殺すということではなく、むしろ、ホメオパシー的にどんどん薄めていって、その精髄というかスピリットというか、そのような存在にもっていくと、何の危険もなく、何の副作用もなく、それがそのまま健康な状態に我々を持っていってくれる力になるということがホメオパシーにおいては起こるのです。

それから、ヴァクシノーシス(広義の副反応)のお話もありました。ワクチンを摂取すると確かに、ある特定の病原菌に対しては抗体ができて、そして、その病気にはなりにくくなることが通常はあるわけです。しかし松本先生のお話を聞くと、実際にはそれさえも起こらないワクチンさえあると聞いてびっくりするのですが、ただ、もし特定の病気にはなりにくくなるということが起こっても、身体の中のいろいろな防御体制が、ある特定の病気にだけ条件づけされるわけです。その特定の病気には確かになりにくくなるのだけれども、全体の健康状態というのは崩れてくることになります。それだけにはなりにくくなるという状態になりますので、トータルでは健康ではなくなるわけです。これも非常に大きな問題です。

それからウイルスの場合、例えばインフルエンザの場合など、突然変異が非常に簡単に起こるため、誰にでも効くようなワクチンというものが非常に作りにくくなるという話もありました。

そして、小児疾患の話もありました。子どもがかからなければならない病気というものが、昔からあったわけです。そのことをずっと昔から我々は知っていて、例えば麻疹というものは、かからなければならないものとされていたわけです。それが、とにかく病気と名前がつくものはすべて避けたい、病気は悪いものだ、何らか予防できるのなら、全部予防しておきたいという、偏った、病的な考えが世界中に蔓延してきたわけです。病気の真の意味を考えずに、ただ避けたい、というその一念しかないわけです。病気が本来何かということを何も考えないで、そういう考え方になってきています。しかも、それが一見説得力を持っているような気がします。「病気って嫌だよね」ということで済ませてしまうと、その時は良いように思えても、そのしわ寄せが何らかの形で必ず来ます。もっと深刻な形で。例えば、子どもが高い熱を出せば、確かに心配ですよね。でも心配だからといって、大きな意味というものを台無しにしてはいけません。それを解熱剤で下げようとすると、さまざまな問題を引き起こします。

特に子供は生まれながらにして色々なものを受け継いでいるわけです。いわゆる遺伝的なものを含めて——遺伝がすべてではないのですけれど——何らかでこぼこを持って生まれます。生まれたときにまん丸では全然ないわけです。もっとも私たちが生まれながらに受け継ぐものは、すべて遺伝という概念の中に含まれているわけではなく、それがすべて遺伝子の中に情報として入っているというわけでもありません。しかし、もちろん私たちが受け継いでいるものは、一般的に遺伝といわれているものが、大きな割合を占めてはいます。

子どもが小さい時は生命力が強いですから、子供がかからなければならないとされていた病気にかかるということは、生命力が強いうちに、生まれながらのその凸凹、病的なエネルギーの根幹を、今のうちに出しておきたいという、重要な試みをしているわけです。これは極めて重要な試みなのです。ですから、昔から、子どもがかからなければならない病気を子どもがした後は、子どもの体質が非常に強くなっているということを経験的に知っているわけです。それが子供の時にかかる病気の大きな意味です。ですから、ただ心配だと言うだけで、何でも避けようということは、よく考え直さなければなりません。

予防とは何か

さて前半のまとめはこれくらいにして、私のお話を致しましょう。今日はホメオパシーの立場から、いわゆる予防ということについて考えます。そして、ホメオパシーの予防的なレメディーとは何か、というところまで話をしたいと思います。

資料の方には括弧つきの「ホメオパシー的予防」というふうにしております。それはどういうことかと言いますと、予防というのは非常に大きな問題を含んでいるわけです。予防というのは、「予め防ぐ」と書きます。一体何のために予め防ぐ必要があるのでしょうか。このことについて、我々はあまりきちんと考えていません。予め防ごうという心の動きのために、大きなものを失っていることがあるわけです。

予防ということを特にあまり考えないでいるわけですが、これは恐怖から始まっているわけです。例えば、子どもが何かの病気にかかって、どんどん病気が重くなってしまったり、不幸なことになってしまったり、その後遺症が起こってしまったらどうしよう、だから、予めそうならないように防ぎたいという、簡単にいうとそういう風な心ですよね。そうしますと、それは当然の人間の心だし親心だし、何の問題があるんだと思いがちです。

今、そのような心の動きを否定しようとしているわけではないのです。そうではなくて、ただよく考えてみる必要があると申し上げているわけです。今日は、予防とはいったい何なのか、予め防ぐということはどのような心を意味するのかという深いことについては、詳しくお話をする時間はありませんが、それについては、ファーストエイドの授業とか、その他の授業のときに譲りたいと思います。

ただ要点を申し上げるとするならば、予防という言葉が一体何を意味しているかといいますと、「予防」したいと思っていることを、知らず知らず「前提」としているということなのです。こうなったらどうしよう、何とかこれだけは避けたい、という心は、知らず知らず、それが起こることを前提のようにしています。「こうなったら」と思う時、それはまだ起こってもいないのに、それがまるで起こってしまったかのように、既にそれを前提にして、そこから考えを始めていると言うことなのです。

一体その何が問題なのかと思われるかもしれません。ではこれは何を意味するかを申し上げましょう。病気のことだと、逆にわかりにくくなるので、予防ということで別の例を挙げましょう。例えば、かわいい女のお子さんがいらっしゃって、そのかわいい女の子に悪い虫が絶対につかないように、一生家から出さない!ということを考えてみてください。これも予防ですよね。そうしますと、確かに悪い虫はつかないですよね。でもその子の一生はどうなるでしょうか? 皆さんお笑いになりますが、しかしこれが、先ほどお話したヴァクシノーシスなんです。あるひとつの事柄だけに集中して、すべてがそこだけに集中して、他の全体性というものをすべて失ってしまうわけです。

この悪い虫がつかないという例ですと、そのばかばかしさに気がつきやすいのですが、病気ということになると、我々の中に恐怖がありますから、その大きな意味がわかりにくくなります。また同時に、これだけは避けたいという気持ちそのものが、逆にそのような状況を非常に招きやすくなるということがあります。つまり、そのような前提を持ってしまっているわけですから、もうそれは単なる仮定ではなくて、自分の気持ちの中ではほとんど事実のようになってしまっているわけです。そしてそのような思考の流れというものが自分の中にできているわけですから、当然そのようなことが起こりやすくなってくるわけです。

本当の意味で備えがある状態というのは、本当に健康な状態のことです。本当に備えがある状態というのは、何かが起こることを「前提」にして、それに対して「予防線を張って」身構えている状態ではありません。本当に健康な状態であれば、どのようなことが起こってもそれに対してちゃんとした対処ができます。必要に応じて必要な対応ができるのです。本当の備えがあるということは、何かに部分的に囚われることなく、健全なる全体性を持ち続けるということなのです。

今お話したことからおそらくお分かり頂けると思いますが、実はどのようなことであれ、物事に対する最も正しい対処というものは、それが本当に起こった時に考えるということが、いちばん正しい対処の仕方です。これはとても誤解を招きやすい表現であることは十分に承知しています。なぜならば、我々は、日頃「泥縄式」では駄目だ、ちゃんと日頃から予め備えがなければならない、という考えを持っています。これは確かにそうなんです。けれどもそれは「備え」であって、ここでいう「予防」とは全然違うことです。私たちは、何となく雰囲気で「予防」と「備え」とを混同しています。

本当に健康になること

ここが今日のいちばん重要なポイントになることですが、本当の予防とは本当に健康になることです。予防のための予防ではなく、健全さの結果としての「予防」ですね。これが先ず第一の予防です。

先ほど松本先生がおっしゃったように、いわゆる抗体ができることと、健康であることとは別問題です。本当は無関係であると言いたいところなのですが、無関係と言うと多少差し障りがあるので、別問題であるとしたわけです。健康と言うことはどういうことかというと、私たちがこの世に生を受けた目的に向かって、精神、肉体、他あらゆるものが傾注されて、その目的が達成されるように毎日充実して過ごすということです。精神的にも肉体的にも、充実している、これが健康な姿ですね。

では病気はいかにしてなるのかということですが、病原菌がいたら、自動的に誰もが病気になるわけでは全然ありません。この部屋の中にも、色々な細菌やウイルスもいます。でも、そういうものがいたら自動的に病気になるのではありません。ではどのようにして病気になるのでしょうか? 私たちには色々な意味ででこぼこがあります。色々なでこぼことなんらかの要因が結びついて、相互作用を持って病気になるわけです。ここが非常に重要です。何らか一方的に病気になるわけではなく、その人のでこぼこと、何らかの要因との相互作用があって初めて病気は起こるわけです。もちろんこれは病気に限ったことではありません。全てにいえることです。

人によってどのようなところが弱くて、どのようなことと相互作用を持ちやすいのか、それぞれ違いますね。それを、感受性、罹病性とも言いますが、例えば気温が変わるだけで病気になる人もいますし、極端な温度変化にも平気な人もいます。つまり気温や温度に対して非常に感受性が高い人もいれば、縁をもちにくい感受性が低い人もいます。人によって何に強いのか弱いのかというのは皆違います。

つまり、最終的には病気の主体というのは、その人のあり方、その人のでこぼこです。そして、さまざまな要素、寒いとか暑いとか、結核菌がいるとか、これはホメオパシーでは、exciting cause つまり誘発原因というわけです。病気のスイッチですね。ただのきっかけにしかすぎません。これが自動的に病気を起こすわけでなく、我々との相互作用で病気となるのです。相互作用を仏教的な言葉で言うと、縁です。ですから、いちばん良い予防と言うのは、我々自身がどんどん健康となっていくということ、でこぼこというものがどんどん埋められていって、そして、だんだん丸に近い状態になっていくということです。そうすると何があっても、病的なことと関係を持ちにくくなりますから、非常に病気になり難くなるわけです。ですから、これがいちばん良い予防です。もし予防という言葉を使うとすれば、これがいちばん良い予防です。つまり健全さの結果としての予防ですね。

そのときに基本的なことは、例えば食事ですとか、栄養ですとか、睡眠ですとか、色々な生活習慣ですとか、私たちの生命力ができるだけ下がってこないようにする根本的なことですね。そういったことがいつも充実しているようにする、これがまず第一です。そして、第二にその次にでてくるレメディーというのは、根本体質的なものですね。この根本体質というものを、丸の方向に埋めてくれるようなレメディーを服用するということです。これはホメオパシーでいう根本体質を良くするということです。そしてその次に初めて、特定の感染症などに対する個別的な予防が最後にでてくるわけです。予防というとそれが最初にでてくるイメージがありますが、むしろそれは最後です。

ですから、一番目と二番目が最も重要です。二番目は、一番目を助けるわけですから、本当は一番目と二番目とは同じだと思って頂いてよいのです。丸に近づいていくならば、どのような要因があっても根本的なところで縁を持ちにくくなりますから、それがいちばんいいわけです。

流行地域に行く場合

もし、何らかの病気が流行ってきたとします。あるいは、何らかの病気が流行っている地域に行くことがあるとします。そうしますと、法律的にその病気の予防注射をしなければ入国できないということがよくあります。その国にどうしてもいかなければならないときは、ワクチンをうたなければなりません。この時には選択の余地はありません。それはそんなに悪いことではありません。なぜかと申しますと、何かの病気がすでに流行っているわけなので、感染するの確率が非常に高い地域ですから、何もないときに勝手に予防しようと身構えるのとは違います。

全然女性にもてない男性が、女性から惚れられて困ってしまってはいけないと、必死に予防しようとすると滑稽でしょう。それと同じようなことを予防注射がしているところがあるのですが、女性にとても人気があるスターが外出する時に何らかの「予防策」を取ることは、それなりに意味がありますね。それが必ずしもベストとは申しませんが。

つまり単なる想定ではなく、現実に起こっているようなときに、予防注射をうつというのはそれなりに意味があります。これもベストな方法だとは申しませんが、それが必要ないときの状態とは全然違います。ですから、そのような場合にはベストではないけれども、予防注射の意味はそれなりにあります。そういう地域に行かなくてはならない時に、予防注射を打つことに否定的になられる必要はないと思っています。もちろん、そのときにもホメオパシーで、出来ることはたくさんあるのですが、それが法律で決まっていれば、そこには選択の余地がありませんし、それほど悪いことではありません。

ホメオパシー的予防レメディー

強制的な要請がない場合でも、何らかの病気が流行っているというときには色々な方法があります。ホメオパシーにはさまざまなレメディーがあります。「ホメオパシー的予防レメディー」*1と書いてある、お配りしたプリントの中にレメディーが書いてあります。

また、参考のために、「ステッドマン医学大事典から」*2というプリントをお配りしています。これは、アメリカで作られている、現代医学の代表的な医学辞典で、現代医学ではどのような考え方をしているのかをそのまま引用してみました。ここに現代医学的な意味での病気、感染症、またそのウイルスとかワクチンとか、記載されていますので、大まかにどのような症状を持っているのか、現代医学ではどのようなことが原因とされているのか、ということがだいたいわかります。現代医学を盲目的に信奉している人たちが、結構ショックを受けるようなことも書いてあったりしますが、これを参考になさってください。

ホメオパシー的予防レメディーのプリントを見ていただきたいのですが、例えばAのCholeraコレラの30、と書いてあってNosodesノゾと書いてあります。あるいは、Cuprumカプラム30と書いてあります。そして、BにCamphorカンファーとか、Cuprumカプラムとか、Veratrumヴェラトラムとか書いてあるわけです。これはどういうことかというと、まずAにはいわゆる「予防的なレメディー」が書いてあります。そしてBには、もしその病気になったときに、非常に良く効くホメオパシーのレメディーが書いてあります。しかしながら、いちばん下に書いてあるように、昔から、その病気の治療にベストなレメディーというのは、同時に最高の予防的なレメディーでもあるとされているわけです。本によっては予防用のレメディーと治療用のレメディーとを分けてあるので、その本を参照して一応AとBに分けました。詳しくは後でお話するように、治療用レメディーは予防用レメディーを兼ねますが、予防用レメディーは必ずしも治療用レメディーになるわけではありません。ただ不必要に複雑にしたくはありませんので、余り分けて考える必要はありません。

この中にCholeraコレラ30 Nosodesノゾと書いてあります。一体ノゾとは何なのかというと、一見予防接種のワクチンに近い感じのものです。というのは、その病気になった人の病変組織を原材料としているからです。ただし、それをホメオパシー的に天文学的に薄めて叩いてあります。ですから基本的にはワクチンと同じようなものから出発していますが、不活性化するためにホルムアルデヒドや水銀で殺そうというのではなくて、まったく違う次元の処理をしたものです。また、ホメオパシーの場合はガン細胞で培養するということはもちろんありません。その必要がありませんから、それをそのまますり潰して、天文学的に薄めていってレメディーにするわけですので、ある意味全く違うものですが、病気にかかった人の病変組織から作ったものだという点で、普通のホメオパシーレメディーに比べると、ワクチンに少し近いところがあります。

病気にかかった人の病変組織から作るノゾですが、これは、かなり特殊なレメディーですね。特殊というのはどういうことかというと、これは正確に言うとホメオパシーとは呼ばないで、Isopathyアイソパシー、とかTautopathyトートパシーと呼ぶものです。詳しいことは別としまして、要するに、「同じもの」です。ホメオパシーの場合は、「似たもの」ですね。これに対して、アイソパシーやトートパシーは「同じもの」です。余談ですが、トートパシーとアイソパシーは少し違いまして、アイソパシーは英語でいうとイコール、「同等」、トートパシーはセイム、全く同じもの、「同一」ですね。それは置いておきまして、ノゾとは、「似たもの」でなくて「同じもの」なのです。

さきほどの、予防レメディーのプリントを見てください。面白いことに、Aの方にはノゾが入っていますが、Bの方にはノゾが入っていません。つまり、予防のレメディーにはなりうるのですが、治療のレメディーとしては必ずしも適さないということなのです。実はホメオパシーでは、基本的にアイソパシーはよほどの場合でないと使うべきではないとされていたのです。なぜかというと、同じものを投与すると、単に症状が倍加するだけで、治っていかないからです。つまり、似ているというところに本当の妙味があるのです。その原因のところに近付いて行けるほど似ている必要がありますが、同じ場合は、ただ一緒に共鳴してしまって、単純に症状が激しくなるだけで、治らないとされているのです。ですから、治療には通常あまり用いません。但し、どうしてもホメオパシーのレメディーで適切なものが見つからない場合は、限定的に使用してもいいとされています。とにかくそういうことで、ノゾはある意味では危険で、症状を倍加させることがあるので、基本的には治療には用いられていないことが多いのです。

これに対して、例えばこのCuprumカプラムというレメディーについて、考えてみましょう。カプラムは銅ですが、この症状像は、非常にコレラと似たところがあります。単にコレラという病気に留まらず、非常に大きな広がりを持っています。また、他のカンファーやベラトラムとかも、コレラと似た症状を持ってはいますが、単にコレラに限定されたものではありません。まったく同じではないので、単にコレラが治る、というだけではなくて、その人に根ざした深い大きな色々な問題も一緒に解決するということが、副次的に生じてくるわけです。それをよく冗談的に、「ホメオパシーには副作用はない、と言いますが、それは間違いです。ホメオパシーには大きな副作用があります。それは幸せになる、という副作用です。」と言っています。

それはともかく、以上のような理由でAにはノゾが入っているけれども、Bには入っていません。そして、BはAを兼ねます。つまり、治療的なレメディーは予防的なレメディーでもあります。これはとても重要なことです。ノゾの方が何か分かり易い気がして、ノゾをいたずらに使いたがる人がいますが、ノゾを使うべきではないとはもちろん申しませんが、以上の理由から、ノゾの前にまず普通のレメディーを考えるのが良いと思います。

レメディーの使用方法

今回は各々のレメディーについての詳しいお話は致しませんが、その代わりこのリストをお渡ししました。そして、そのリストの大まかな使い方についてお話をしました。けれども、Bの中でも複数のレメディーがあります。では、どうやって複数のレメディーから見分ければよいのかということですが、どちらにしてもレメディーがお手元にないと使えないことですので、別のプリントに、「ホメオパシー的予防レメディーキット」のプリントをお渡ししました。このレメディーキットの中には、かなりの予防的、治療的レメディーが入っています。もっとも、現在日本で普通に生活している限りは考える必要がないような病気、例えば黄熱病に対するレメディーは、特殊な人を除いてキットに加える必要はありませんから、そういう特殊なものを除いて、皆さんに合ったようなレメディーキットにしています。

そのキットには、大体どのような目安でどのようなレメディーを選んでいったらよいのかという説明書をつけますので、それをご覧になれば、ご自分の全体性とか、症状の出方の特徴をつかめると思います。そして、いちばん近いと思われるものを飲んでいただくことになります。

それでもどうしてもよくわからないということもあるでしょう。かなりひどい症状がでていて、ライコポディウムか、サルファーか、ナット・ムールなのかどうしてもわからないときは、一つの手段として三つとも飲んでください。もし正しいレメディーを選ぶことができる場合は、一つがベストなのですが、わからないときには次善の策として、二つでも三つでも四つでも、飲んでも構いません。一つぴったりいった場合に比べると、その力は落ちますけれども、それでもどうしてもわからないときには複数飲むべきです。

来年、色々なレメディーキットを含めたレメディーの本格的な販売を致しますが、大事な事は現在できることから始めていくということです。飲むレメディーは、できるだけ一つの方が良いのですけれど、また時間的な余裕があるときには一つずつ試していくことも良いのですが、時間的余裕がないときがあります。その時には躊躇せずに、遠慮なく複数のレメディーを飲む、それがその状態に一番合っているわけです。特に感染症というのは、もし進行が始まり始めたら非常に早いですから、躊躇されないで複数のレメディーを飲んで下さい。

それから、例えば麻疹などですけれども、かからなければならない病気に対してホメオパシーのレメディーを飲んでもいいのだろうかと、いう疑問が当然わいてくると思います。しかし、ホメオパシーのレメディーは何をするのかというと、それは抑制をするものでは全くないわけで、出なければならないエネルギーが、きちんと出て行くことを助けるわけです。ここがとても重要なところです。

もし何らかの理由があって、子供が麻疹にかかることがどうしても心配である、どうしても避けたい、ということがあったとしましょう。そういう場合はホメオパシーの麻疹の「予防的レメディー」を飲んでもよいでしょう。そういう時、何が起こるかと申しますと、さきほど申し上げましたように、レメディーは麻疹のエネルギーを抑圧するのではなく、非常に微細なレベルで、その人のでこぼこの根幹から何かが出ようという動きが起こり、それにあわせて出なければならないものが、だんだん出て行くわけです。ですから、抑圧するわけではなくて何らか出て行くべきものが出ていきます。

ただし、理想的に麻疹にかかった状態と、いわゆるホメオパシー的予防と比べると、ホメオパシー的予防も決して悪くはないのですが、理想的な場合と比べると、そのあとの健康状態は多少レベルが違う可能性があります。基本的には、かかった方が良いものは素直にかかった方が良いと思います。しかし、ホメオパシーのレメディーを使うことは、予防接種によってかからなくするということとは、まったく次元が違うことです。

この間、ファーストエイドの授業の中で松本先生に予防接種のお話を頂きました。そのときはもっと時間があったので、もう少し詳しい話がありましたが、以前は一緒に麻疹にかかるパーティー(笑)とかがあったりしたわけです。ある子どもが麻疹になったときは良いチャンスなので、一緒に麻疹になりに行くわけです。そして、麻疹をもらって帰ります。そうすると、みんな麻疹になっているので安心して麻疹になります。何かお祝いという感じになるのです。起こっていることは、いわゆる病気ではあるのですが、起こるべきことがちゃんと起こっている、とてもいいことが起こっているということを、みんなでシェアしているわけです。

今日は各々の病気については特には詳しいご説明は致しませんでしたけれども、皆さんに差し上げましたリストの中に、先ほど申し上げた意味でのレメディーがあるということさえ理解していただけたら十分かと思います。個別的なことに関しては、後ほど質疑応答のなかで一緒にご質問にお答えいたします。

質疑応答

質問:

二つ質問があります。ひとつは、たとえば、ポリオの予防接種などが、ほとんど義務のように行われているのですが、もしその予防接種を止めて、このノゾの予防レメディーを飲もうと決めた場合に、飲むタイミングはどのようなタイミングが良いでしょうか。例えば、インフルエンザの場合は、流行っている時に飲めばよいというのがわかるのですが、ポリオなどはいまどき流行っていないので、いつかということです。

あと、麻疹パーティーという話があったかと思うんですが、昔、私の子どもも水疱瘡とおたふく風邪をお友達からもらおうと思ってそのお宅に行って2時間ほど遊んで、ストローでジュースの回し飲みをしたんですが、それでも、もらえなかったので(笑)、どのような状態で行くのがよいのか、疲れさせてから行くとか(笑)、今でも疑問なので、その辺を教えていただけたらと思います。

回答
永松:

まずポリオについてですが、ポリオにつきましては、いわゆる先進国では基本的に絶滅しているわけですから、ポリオについてはする必要は全然ないわけです。

それから、予防的なレメディーを飲むタイミングですね。第一選択としては、根本体質のレメディーを飲みます。月に一回から二月に一回くらい飲んでください。基本的に、これで良いのですが、もし何らかの病気が流行ってきたとします。ある特定の病気に対するレメディーを飲む必要があるのかどうかということは、何かが流行ってはじめて考え始めるというタイミングで良いのです。そして、その場合でも、その人の根本体質のレメディーを飲むということを第一に考えればよいのです。

それで、何らかどうしてもその病気にはかかりたくない、ということがもしあれば、あるいは、考えにくいですけれども、仮にコレラが流行っている、チフスが流行っているということがその地域で起こったとするならば、特定の疾患に関係するようなレメディーを飲むことを考えてもよいと思います。しかし、それでもある種の条件付けになってしまいますので、できれば根本体質のレメディーを飲むことで対処していただきたいと思います。と申しましても、根本体質の見極めは、なかなか簡単ではありませんが、普段からいろいろと試しておいて、または専門ホメオパスの診断を受けて、根本体質のレメディーを普段から飲ませて頂きたいと思います。

それから、極めてユニークで楽しいご質問。どうすれば小児疾患にかかれるかという質問ですが、わざわざ疲れさせて、バイタルフォースを弱めてから行けばよいのか、ということですね。このように小児疾患に非常に掛かり易い状況に曝しても、なおかからないということは、基本的にはその病気にかかる必要がないと考えられます。つまり、その病気とはあまり縁を持っていない、特にかからなければならない必然性はないということです。かからなければならないとは申しましたが、無理やり何が何でもかからなければならないということではなくて、それは通常は良いチャンスであるということなのです。ですから、その子に妙に防御的なことをして、たまたま病気にかからなかったということでは全然ないので、さきほどのような場合はそのままにしておいてよいと私は思います。

松本:

最初のポリオに関して言えば、先進国ではポリオの発症は非常に低いのですが、完全にゼロではありません。それはどこから来ているかというと、ワクチンの接種からきているのです。ワクチンを打つことでポリオになってしまうわけです。その意味でも、日本でポリオを避ける方法は、ポリオワクチンを避けることです。

二番目の質問ですが、もしかしたら、かかる時期というものがあるのかも知れません。その子が絶対にかからないということではないのかもしれませんが、発育段階だとか状況だとか、かかる必要がなければかかりません。もし、かかる必要があるのならかかる時期がくると思いますから、そのときまで、普通にやっていればよいかと思います。

質問:

今のお話に関連したことをお聞きしたいのですが、一般的に言っておたふく風邪とか風疹の場合、子どもの頃にかからなくて、大人になってかかったときにひどいとよく言われますが、もし普通に自分の子どもがかからなかった場合の不安があると思うのですが、その点についてお聞きしたいと思います。

回答
永松:

確かに、大人になってかかると大変だとよく言います。男性の場合ですと、ひどい発熱で睾丸がやられ、子どもが出来なくなったりする場合があると言います。どのような状況で子どもの時にならなかったのか、人によりけりですから、一概には言えませんが、もし不安であれば、先ほどお渡しした治療的なレメディーのところですね、例えば、おたふく風邪で言いますと、Bのところの、エイピスとかベラドンナとか、マーキュリーとかファイトラッカとか、プルサティーラとかありますが、もしどうしてもご心配でしたら、この中でお子さんに最も近そうなレメディーを、一年間くらいの間、一ヶ月に一回くらい飲むということをされると良いと思います。もし本来おたふくにかかるべきものがかからなかったのならば、かからなければならない理由と申しましょうか、将来大きくなってかかってしまわなければならない原因のようなもの、その原因的なエネルギーが出ていってしまうので、大人になってかかる可能性がほとんどなくなると考えられます。

専門的には、その子がなぜ子どものときにならなかったのか、という理由から考えていかなければならないのですが、一般的には、今申し上げた対処をされるだけで、大人になってからかかる確率は非常に低く、ゼロに近いと思います。

松本:

原因から考えるという立場から言いますと、おそらく、大人になってかかるという現象は、最近起こってきた現象だと思います。それは、全部ではないでしょうが、予防接種で抗体を作ってしまうと、個人の一生涯を通しての抗体ができるわけではないですね。これはワクチンを作る立場の免疫学者の間に広く議論されていることで、確かに、ワクチンによって抗体は一気にできます。それで不健康な状態で、一時的におたふく風邪に免疫ができたように見えるわけです。けれども、それが一生続くというわけではなくて、やはり、付け焼刃的なものでその病気を避けてきたものですから、大人になってかかるようになってしまいます。その時点でかかってしまうと、子どものときの必要な発育段階として病気にかかっていませんから、ひどくなってしまうわけです。100%予防接種のせいだとは言えませんが。ですから、予防接種をできるだけしないこと、もし何かしたい場合はレメディーを使えば、大丈夫だと思います。

質問:

子どもがアトピーで2年ほど前からホメオパシーの治療をしています。今3歳になりまして、食物アレルギーがあるのですが、以前の小児科の先生にかかった時には、予防接種を絶対しなきゃだめだというようなことを言われました。今は引っ越して神奈川県にいるのですが、これから色々な病気になった時に、小児科などの病院に行ったりすることがあると思います。そんなとき、ホメオパシーの治療をしているということを理解してくれるお医者さんが少ないかと思うんですけれども、ホメオパシーを理解してくださる方のネットワークとか、地域のリストなど、あるといいと思うんですけれども。

回答
永松:

そうですね。今おっしゃったようなことが非常に起こりやすいわけで、私どもの方でも、何とか色々な医師の方に、ホメオパシーを根本的なところから理解してほしいということで、そのためのコースを作ったりしてはいます。ですから、そういう方が少しずつ出てきてはいます。これは一遍にはなかなかいきませんけれども、だんだん広がってはくると思います。

ただ現実的には、これはホメオパシーに限らず、とにかく、頭から現代医学以外は全部インチキで、現代医学しかだめだと思い込んでいらっしゃるお医者さんも、かなりの数いらっしゃることも事実なんですね。なにか特に根拠があるわけではなくて、学校でそれしか習ってこなかったし、他のことは考えたくもないので、とにかく、一般的に、現代医学というものが権威を持って、そういう位置付けをされていますので、ほかの事は考える必要はないですし、そして、仮にそれで治らなくても、それはその人に問題があるのではなくて、それは現代医学がそこまで行っていないんだといえば、それで責任は逃れてしまうので、それ以上は全く考えないような方もなかにはいらっしゃいます。けれども、医師の方には必ずしもそうではなくて、色々な幅広い理解を持っている方も随分いらっしゃるようにも思います。そういった方を探していかれるということ、これが現在できる最大限のことではないかと思います。

必ずしもホメオパシーを知っているということが重要なのではなくて、そのお医者さんの基本的な姿勢と申しましょうか、それがちゃんとしていれば、仮にその方がしていることが現代医学の薬剤しかなくても、その薬を使うことそのものがその根本的な問題というよりも、その基本的な姿勢が重要です。例えばアトピーでステロイドを使う場合でも、ステロイドとは何なのかということを本当に分かっていて、場合によっては使うこともあるという使い方と、際限なくどの場合でも使うような方とは同じ使うにしても全然違いますから、お医者さんの考え方とか使い方とか、そのようなところをみていけばよいのではないかと思います。

松本:

アトピーの場合、特に毎日が大変ですね。単にお医者さんだけというのではないですから、毎日の対処が必要です。その意味では、もちろんレメディーも重要ですけれども、毎日のケアもすごく大変だと思います。実は私も娘がアトピーで、今は何とか治りましたが、やはり毎日のケアがすごく大変で、想像を絶するようなこともあると思います。お医者さんのやり方も様々ですが、ステロイドとかはできれば使わないように、どうしてもという仕方がない場合もあるかもしれませんけれども、実はそれに対する代替療法もたくさんあります。

ホメオパシーの観点からは、もちろん、できるだけ皮膚症状を抑え込まないように、ということです。もちろん、それがベストですけれども、毎日の生活をしていますと、必ずしも理論通りにはいきません。特に赤ちゃんの場合はかきむしってひどくなりますから、大人の場合にはある程度理性で抑えたりもできるのですが、その辺をどうするかということが問題になってくるわけです。そこがすごく大変だと思いますが、その点をよく理解して頂けるお医者さんを探せたらよいかと思います。私の場合は、正直言って医者は大嫌いなので、医者には頼らなかったのですけれども、それは極端な例として、あまり勧められません。永松先生もおっしゃったように、現代医学を行っている方でも、ホリスティックなことをわかって使っていらっしゃる方もいるとは思うんですね。確かに、探し出すのは難しいかと思いますが。先日も、アトピー関係の本を読んでいて、比較的よい本を見つけました。例えば20年間ステロイドを塗って症状を抑えていくと、やめたときにリバウンドが来ますから、やはり治すのに20年くらいかかってしまいます。そのような状況になる前に、外に出すことがよいのですが、そのようなことをわかっていらっしゃる現代医学の方も意外と多いように思えます。そして、外に出す時に本人があまり苦痛にならないように工夫することが大切です。

質問:

二つ質問があります。こちらの予防的レメディーのリストを拝見させていただいて、結核がないんですけれども、確かホメオパシーではマヤズムのひとつになっていたかと思います。私は母が結核にかかったことがあって、自分自身でも気になっているんです。結核がところどころで耐性菌がでて流行ったりしているのですが、結核に対して、レメディーはあるのでしょうか。

二つ目の質問として、医療従事者は、肝炎や感染などの感染の確率が高いと思うんですけれども、そのような場所にいる人の予防ということで、教えていただければと思います。

回答
永松:

このリストの中に結核はないですね。確かに、結核菌が媒介してはいるのですが、結核はここに書いてあるような一般的な感染症とはちょっと違うということが、いちばん大きな理由です。今日はマヤズムの話はしておりませんけれども、かなり根源的な深いところに根ざしていることと関係があることです。

結核にもノゾがあります。Tuberculinumタバキュライナム、そして、よく似たものでBacilinumバシライナムといわれるものです。また、結核と非常に関係が深いようなレメディー、例えばPhosphorusフォスフォラスですとか、Droseraドロセーラですとかありますが、結核という病気に関しては、もっと深い意味があるので、ここには入れておりません。ただ、いわゆる予防ということからいえば、もし気になれば、出来ることはあります。もし何らか事情があって飲みたいということがあれば、ご相談ください。

それから、医療従事者の方は、確かに肝炎などに感染しやすくなります。これはある種の事故ですよね。病院にいると自動的になるということではなくて、何らかの事故的なことがあって初めてなるわけですけれども、先ほど申し上げましたように、何らかそれにかかりやすいようなはっきりとした理由があるような環境にいるのであれば、いわゆる予防的なレメディーを飲むことができます。例えば肝炎ですと、へパタイタスのAとかBとかありますね。それから、Cheledoniumケレドニウムなどのレメディーもありますし、またエイズですと、エイズのノゾというものもあります。色々な病気に対して、ここ10年間で、非常にたくさんのノゾが作られてきていますので、あらゆる病気にノゾがあると考えていただいて結構です。

ただ、専門的にいいますと、そのような事故が起こりやすいような職場の個々の問題とか、個人的な要因ですとか、そういうこととも大きな関係があるのですけれども、おっしゃったようなことは本当は専門的な処方を必要とします。例えば、医療従事者の方がご相談にいらっしゃるとします。そのときには、単に病院に勤めていて、一般的に感染の確率が高いということ以外に、トータルに大きな傾向というものをお聞きいたします。そうすると、肝炎というのはある種の事故であって、それは何らか正しい意味で防ごうと思ったら防げるものなんですね。そして単にそうならないためということではなくて、その人の全体性の中で、結果としてそのようなことが起こりにくくなるような処方ができます。全体性の中で誤って針を刺してしまうような事故的なことが、極めて少なくなります。

松本:

一つだけ指摘しておきます。これは一般的なことですけれども、バイタルフォースを高めるような生活習慣を見直すことです。例えば、過労しないようにするなどです。特に医療従事者は働きすぎて、自分のバイタルフォースを弱めてしまうことが多いと思いますが、それはあまり理想的ではないですね。本当はどちらかというと、医療従事者はバイタルフォースを与えなければならない立場ですから、できるだけそれを落とさないように生活するということです。難しいこととは思いますが。

質問:

二つお伺いしたいのですが、リストの中で破傷風のBの治療に用いられるレメディーのところにレメディーがないのですが。

あと予防接種についてですが、予防接種をすでにうってしまった場合に、予防接種の害を減らすためのレメディーや処方の仕方がありましたら、教えていただきたいと思います。

回答
永松:

Aの中のLedumリーダムは治療的にも使用するレメディーです。これは深い傷ということで治療的にも使うレメディーです。これはBの中に入れるべきでしたね。有難うございました。

それから、予防注射をうってしまったあとにどうするかと言うことですが、予防注射の害というか、マイナス面を、中和的にするレメディーがあります。例えばSulphurサルファーですとか、Nux Vomicaナックス・ヴォミカのようなレメディーが、そのような場合に使われることもあります。安心のためにそれをすることも良い方法だと思います。ただし、なかなか難しいところですが、余り神経質になり過ぎないということも大事なことだと思います。そして、むしろ根本体質的なレメディーをのむとか、もしくは、その人のバイタルフォースのレベルを上げていくということが最も良いことだと思います。

質問:

人体の免疫力を上げるホメオパシーと解釈させていただいたのですが、下の子の場合、来年度入院して、薬剤の大量投与または輸血を受けなくてはならない状況に陥ると思います。その場合、ホメオパシーを使って、どの程度、効力があるのでしょうか。予防とか、院内感染の心配もありますし、お医者さんからいただく薬とか、考えるべき点がありましたら、お教えいただきたいと思います。

回答
永松:

最初に免疫を上げるものだと理解されたとおっしゃいましたね。そうですね。トータルなところでのバイタルフォースというものを上げていく、そのバイタルフォースの一つの機能として、自己治癒力というものがあって、そして、その自己治癒力の機能のひとつとして、免疫力というものがあるのです。

ホメオパシーで援助できることはたくさんあります。もし可能であれば、個別の話をお聞かせ頂くのが一番良いかと思います。いまおっしゃったご事情では、一般的な話を聞かれてできることと違うものですから、かなり個別的な細かい指導が必要です。一般的なお答えではできないので、個別的なお答えにさせていただきたいと思います。

ホメオパシーでできることはたくさんあります。そして手術をされる前と後で、ホメオパシーのレメディーを併用された場合とそうでない場合と、手術後の予後が随分と違うということを今まで随分と経験しておりますので、ぜひそのようなことをお勧めしたいと思います。

質問:

松本先生にふたつ質問があります。先生のお話のなかで、予防接種をしなくて病気にかかっても、適切なケアをすれば、ほぼ100%治るといわれている点について、ホメオパシーがある場合と、それを利用しない場合の適切なケアについて、それぞれアドバイスいただきたいと思います。

それから、二つ目の質問ですけれども、なぜホメオパシーなら予防していいのかということを、生物学者の立場から補足していただければと思います。

回答
松本:

なぜホメオパシーでは予防していいのかということについてですが、これも最善の策ではないのです。予防ということの意味から考えると、ホメオパシーで予防もできるのですが、必ずしもベストではありません。ホメオパシーのレメディーを用いると、経験的にはかなりの程度それで病気にかかったような状態になることが分かっているため、ある程度はホメオパシーの予防も悪くはないとは言えると思います。

しかし、小児疾患はできればかかるべきものだと考えられるわけです。ですから、もし予防接種を受けたいと思っていても、予防接種が危ないと言われると、他に何もなくて心が安定しないという場合は、ホメオパシーで予防するのがベストということになります。

ですから、この講義で予防接種はよくないということを言っていますが、もちろん、これも事情によりけりですね。例えば、お父さんは絶対打て、お母さんは絶対打つなといってけんかが起こったり、あるいは、祖母や祖父から絶対に受けに行くようにと言われたり、それを拒否すること自体がすごいストレスになることがありますね。それが原因で精神的な病になってしまうこともあるでしょう。精神的な病になるくらいだったら、打った方がいいかなと思います。矛盾するようですが、やはり、心の安定と比べると、予防接種などというものは、ある意味ではたいしたことはないのです。ですから、言いすぎですが、自分の置かれた全体的な境遇の中で、どれがいちばんいいかということをいつも考えていかなければなりません。社会が相当の圧力をかけてきますから。

それから、予防接種をしなくて、かかった場合の適切なケアということですが、ホメオパシーを利用する場合としない場合についてですが、利用する場合は、永松先生がおっしゃったように、できる限りノゾを使用しないで、健康を見据えたようなレメディーを投与する、ということです。永松先生の言葉では、全体が丸くなるような処方です。健康全体が上昇することによって、病気に対する抵抗力をつけるようにします。全体像から、でこぼこを埋めていくようなものです。それが、感染症の場合でも、ベストな方向に持っていくわけです。これが、ホメオパシーを使った場合のケアです。

ホメオパシーを使わない場合のケアですが、例えばインフルエンザについて考えてみましょう。かなり高熱がでますよね。どれくらいの高熱が危険かという一般論は難しいのですが、40度以下ならまあ大丈夫です。やはり、親としては、特に小さな子供がインフルエンザになりますと、後遺症がでるんじゃないかと考えて、よく解熱剤なんか入れる方も多いと思います。あと、抗生物質ですね。

インフルエンザの場合、インフルエンザ脳症で亡くなる方がいらっしゃいますが、小さい子どもさんの場合、予防接種をしていないから脳症になるんだという主張が一部にあるようですが、真実は、どうもそうではないようです。脳症・脳炎が高熱そのものが原因で起きて、後遺症が残ったり、亡くなったりすることはないのです。実は、解熱剤が脳症の引き金になっているということがわかっています。例えば、脳症は日本に多いのですが、他の国にはあまりみられません。それは、ある特殊な解熱剤を使っていない国では、ほとんど起こらないのです。日本ではそのようなものを使っていますから、そのようなことが起こりやすくなっているのです。また、アメリカでは、単純にアスピリンが悪さをしているようだという報告があります。インフルエンザの症状というのは、熱によって身体がウイルスに対処しているわけですね。それを無理やり抑えると、熱が低いということ自体も良くないことですし、あるいは、薬の副作用として、直接、事態が悪化してしまうことがあります。そこに注意しなければならないということがひとつです。

ただ、これは一般論はなかなか言い難いです。確かに異常に熱が高いと、熱自体で身体がやられてしまうこともあるでしょうから、そのときは、水分の十分な補給も必要となります。スポーツドリンクのようなものでもいいです。ただ、あまりにも異常な場合は、やはり点滴が必要となってくるかもしれません。そのような場合は、専門的な対処が必要となってくるかもしれません。

一般的なケアとしては、非常に常識的なことでいいですね。できるだけ消化器に負担を与えないものを与えることが第一です。基本的には、子どもが食べたくないものを無理に与えないことです。食べ物としては、フルーツが好きな方であれば、フルーツを与えることもよいでしょう。常識的なケアというわけですが、最近はその常識もなかなか忘れ去られているため、大変な時代です。食事療法とか、薬効がある食事やハーブなど、古来からの知恵が必要です。そのような方法で対処するのが最もよいかと思います。

永松:

今お話が出た熱のことでびっくりするようなお話を少しだけしたいと思います。どのくらいの熱で大丈夫かということですが、前にある小児科医の書いた本を読んだときに、驚くべき記述に出くわしたことがあります。その方が日赤に勤めていたときのお話なのですが、日赤では熱は必要で出ているとして、基本的に解熱剤は投与しないそうです。これはもちろん非常に妥当な考え方で、驚くべきことではないのですが、その時に先輩医師から説明を受けたのが、人間は41.6度くらいの熱が20時間くらい続いても、全然平気だということです。その医師もにわかには、信じられなかったのですが、本当に大丈夫らしいのです。

また非常に高熱になった場合、ホメオパシーのレメディーもいろいろとあります。さきほどの解熱剤が非常に危険なのは、熱せられたものにいきなり水をかけるようなものだからです。ホメオパシーのレメディーは、そうではなく、短期間に集中的に熱を出してしまいます。熱として出なければならないものが短時間で出てしまい、なくなってくるので、必然的に熱が下がってきます。いきなり水をぶっ掛けるような抑圧的方法ではありませんので、危険はないのです。

質問:

松本先生に質問があるのですが、予防としてノゾを使うと病気になってしまう可能性はないのかということです。ノゾを飲んだ時の体の中の反応というのは、私の勝手なイメージでは、他とのバランスを崩さない程度の、抗原抗体反応が起こるというイメージを持ったのですが、そこのところは、どのように考えられますか。

回答
松本:

第一にノゾもやはり極めて希釈していますので、それ自体で病気になるということはありません。ですから、予防接種後の副反応のようなことはありません。その意味では、予防接種と違って、安心です。

第二の質問は、メカニズムの問題ですね。どのようにしてノゾが身体を病気に対して強くするかということです。はっきりいって、ホメオパシーのメカニズムは未だ解明されていませんから、それに正確に答えることは不可能です。ただ、イメージとしては、確かに抗原抗体反応を誘導しますが、それがひとつの方向にのみというのではなく、ある程度全体的な免疫力になるというイメージでよいと思います。健康ということと抗原抗体反応とは、ある程度別問題ですから、ホメオパシーでやっているのは抗原抗体反応だけではないと思います。ですから、ノゾにおいても、それ以外のこともやっていると思いますけれども、イメージとしてはそれで良いと思いますし、完全な答えというのは、今の時点ではありません。

質問:

仮に予防接種しなければならないような病気にかかった場合、治療法としていくつかレメディーの名前が出ていますが、その子に合ったものをひとつ選んだ場合、それを、一日何回とか、何日続けるとか、具体的なことを教えて頂きたいと思います。また、私の家には主人に買ってきてもらった辞書のようなものと、アメリカのホメオパシーのレメディーがあります。色々な会社のものが出ていると思うのですが、物によっては波動が違って効きづらいとか、何かそういうことはありませんか。

回答
永松:

基本的には、予防的に用いたい時には、一週間に一回くらい飲んでください。その病気が流行ってきたときには、一週間に一回、どうしても何らかその病気にかかることを避けたいというときは、一週間に二回、ということをある程度の期間、繰り返します。一般的にはそのようにしてよいと思います。ただ、これも全体性の中でのことですので、本当はオーダーメード的にその方に合った間隔というものがあります。

それから、二番目の質問は、メーカー間で、つまり、ファーマシーによって、レメディーの品質が良いとか悪いとか、いわゆる波動が良いとか悪いとか、そういうご質問ですよね。これは色々な人が色々なことを言います。専門家の間でも、そういう話をするのが好きな人がいます。但しファーマシーに言わせると、腕の悪いホメオパスほどそういうことを言うと言います。効かないのは、私が悪かったのではなくて、使ったレメディーが悪かったんだ、というわけです。これはもちろん検証はできませんけれども、全体として言えることは、腕のいいホメオパスは、そういうことは余り言わないということです。

確かにメーカー間に違いがまったくないとは申しません。非常に心を配って作っているところもあれば、割とラフに大量生産的に作っているところも確かにあります。ですから、どこを選ぶかということになりますと、自分が一番個人的に信頼を置けるところを選ぶのがよいでしょう。あらゆる力を借りることが必要ですから。ここのレメディーは効かないんじゃないかな、と思いながら処方すると、初めから効きにくくなるような方向性に行ってしまいます。ですから、自分なりに、レメディーのせいにしなくてすむような、安心感を持つことも大事だと思います。

但し、私はどこのレメディーもそれなりにいいと思っております。多少、質の違いはありますし、良いメーカーでも効き方に特徴があるのは事実です。英国の幾つかのメーカーにも、明らかに違いが見られます。最初からググッと効くもの、最初は穏やかで途中から急上昇する感じのものなど、いろいろです。しかし、それはあくまで個性の範疇に入るもので、そのレメディーだから効かなかったとか、そこまでの違いはないと思います。どのレメディーもそれなりに信頼がおけるものであると思っています。

またX線検査を何度も受けた場合ですね。X線検査は避けられれば避けたほうが良いと思います。但し、特にそれ以上は気にする必要は感じてはいません。

質問:

女性のためのレメディーキットについて、少しお話頂けますでしょうか?

回答
永松:

女性の場合、男性に比べて心身にいろいろな変化が起きやすいです。生理、出産、乳腺症、更年期障害などをはじめ、さまざまな要因によって、さまざまな変化が起きやすいです。このレメディーキットは、いろいろな問題に広く対応できるようにデザインしています。また多少はその人に合わせて、例えば年齢によって必要なレメディーが多少変わってくるので、年齢によっていくつかのバージョンを作るということも考えております。また、基本的に、キットに入れるレメディーは決まっていますけれども、その方に合ったものを準オーダーメード的にすることも考えています。ですから、お申し込みの際に、ご年齢と、解決したい問題を少し書いて頂くと、それに合わせて組合わせを少し調整することができます。

またポテンシーは200Cがかなりの割合を占めます。200Cというポテンシーは、一般論としては30Cより気を付けなければならないこともありますけれども、それも勘案した上でキットを構成していますから、どうぞ、ご安心してお使い下さい。

永松・松本:

今日は、とても有意義な日だったと思います。ご参加有難うございました。